第7章独創性への回帰

15.未来への危機感と現状への問いかけ安定の中に潜む「依存」という牙

2010年代の幕開け、メガチップスは日本の半導体業界において、ひときわ異彩を放つ存在でした。1990年、進藤が「工場を持たない」という、当時としては無謀とも思われた志を掲げてから20年。重い設備投資に喘ぐ大手メーカーを尻目に、高収益を上げる「ファブレス」の成功モデルは、もはや揺るぎない正解として世に示されていました。
しかし、進藤の心にあったのは、成功への高揚ではなく、身を切るような危機感でした。2011年、任天堂が「ニンテンドー3DS」を発表し、メガチップスはその中核を担うパートナーとして不動の地位にありました。しかし、特定の顧客、特定の市場への過度な依存は、環境変化という荒波に飲み込まれれば、一瞬で瓦解する脆弱性を孕んでいます。「今の成功は、未来の没落の始まりではないか」。進藤は自らに、そして組織に問い続けました。

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16.グローバルへの舵切り「起業家精神」の再燃と大企業病への宣戦布告

進藤は社内に対し「起業家精神の再燃」を強く求めました。会社が大きくなるにつれ、組織には保守的な空気が流れ始めます。進藤は、自著や社内講義で繰り返し「ベンチャーは成功した瞬間から衰退が始まる」と説きました。そして、単に半導体を設計して売るサプライヤーではなく、顧客の課題をアルゴリズムから解決する「ソリューション・プロバイダー」への脱皮を急ぎます。2011年、東日本大震災という未曾有の災害を経て、日本の産業界が「BCP(事業継続計画)」を模索する中、進藤はグローバルな供給網の再構築と、国内依存からの脱却を加速させる決断を下しました。

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17.ビジネスの変革と新領域への挑戦「アルゴリズムからシリコンへ」の徹底

進藤が改めて強調したのは、単にチップを設計するのではなく、顧客の課題を解くアルゴリズムを開発し、それをシリコン(半導体)に焼き付けるという独自の開発哲学でした。2011年の東日本大震災は、サプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしましたが、進藤はこれを「経営を見直す好機」と捉えました。
それは、従来の『顧客に指示された仕様通りに作るASIC』から、自社が主体となって市場を創出するASSPへの比重を高めることでした。特に画像処理技術において、これまで培ったデジタルカメラ向けの知見を、防犯カメラや車載カメラ、さらには医療用機器へと応用する道を探ります。

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