
2014年以降、メガチップスは「過去の成功体験は、次の成功を阻む最大の敵である」という進藤の信念のもと、極めて大胆な舵を切りました。日本の電子機器メーカーが世界市場で苦戦を強いられる中、進藤は「国内市場の延長線上には、もはや未来はない」と断じ、開発の視座をシリコンバレー、そして世界標準へと移行させました。
社員たちには、「シリコンバレーの猛者たちと対等に渡り合い、彼らを唸らせる独創的な提案を持ってこい」と説き続けました。これは単なる精神論ではありません。世界の最先端で何が起きているのかを肌で感じ、自らの血肉とするための「戦い」の始まりでした。
進藤が改めて全社員に徹底させたのは、「単にチップを設計するのではない。顧客の課題を解く知恵(アルゴリズム)を開発し、それをシリコンに焼き付けるのだ」という思想です。この独創性を加速させるため、進藤はこの時期、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)的アプローチの導入に踏み切りました。
自社の技術だけに固執する自前主義は、スピードの速いグローバル市場ではもはや通用しません。世界中の尖った知性と繋がり、外部の核心的なアイデアを取り込む必要があると考え、メガチップスが持たない技術、メガチップスが思いつかない発想を持つ海外のスタートアップに対し、戦略的な投資と連携を加速させました。
「ベンチャーを買収するのではない。彼らと共に未来を創る『可能性』を手に入れる」。進藤は自ら目利きとなり、次世代の柱となる分野のスタートアップとの絆を深めていきました。このCVC活動は、単なる資金提供ではありません。メガチップスが長年培ってきた「量産化の知恵」と、彼らの「破壊的なアイデア」を掛け合わせ、世界を驚かせるプロダクトを生み出すための共同戦線です。このオープンイノベーションこそが、メガチップスを「日本の半導体会社」から「世界のディープテック・プレイヤー」へと押し上げるのです。

現在、メガチップスは創業36年を超え、日本の半導体業界において一定の地位を築きました。しかし、そこに安住の『二文字』はありません。進藤が遺そうとする最大のレガシーは、特定の製品や過去の成功ではなく、「常に変化し、自らを壊し続けることこそが、唯一の安定である」という、ある種、過酷なまでの哲学そのものです。
「人と同じことをして、小が大に勝てるわけがない」。その信念は今、次世代のリーダーたちに受け継がれています。しかし、メガチップスが目指す「世界の構造を変えるような真のイノベーション」への道のりは、いまだ遠く険しいものです。世界中の強豪がひしめく中で、メガチップスの独創性が真に世界を規定する価値となれるか―― その勝負はまさに今、現在進行形で行われているのです。
2026年、進藤が見据えるのは、単なる事業の継続ではなく、さらにその先の100年を支える「知的な基盤」となることです。成功は常に過去のものであり、未来にあるのは常に挑戦だけです。日本発、世界基準。工場は持たずとも、志と知恵のぶつかり合いにおいて、我々は誰にも負けるわけにはいきません。
進藤はこれからも、「独創性をもって社会に貢献する」という熱き情熱を絶やすことなく、不確実な未来に向かって「永遠のベンチャー」として挑み続けます。完成された成功を求めるのではなく、進化し続けるそのプロセスそのものに進藤はメガチップスの存在意義を見出しているのです。この物語に、終わりはありません。進藤は、今この瞬間も、次なる独創への歩みを止めてはいません。